11月28日から12月7日まで東京の国立新美術館で開催されておりました「21世紀アートボーダレス展2019JAPAN」が盛況のうちに終了致しました。
連日多くの皆様にご来場頂きまして有難うございました。
多分野の作家の作品が展示される作品展でしたが、今回は全体の共通のテーマが「JAPAN」ということで本当に作品の構想に悩みました。
普段は洋の生地で作品を作っていますし、自分にとって「JAPAN」はどういうイメージの存在なのか・・しばらく考えに考えました。
そして決まった作品は「いにしえの鏡台」。安土桃山時代あたりから使われていた、手鏡を箱に納めて掛けて使う独特の形の鏡台をイメージして作りました。雛人形のお道具にも似たような鏡台がついていることがあります。
幼い頃から丸い取手付きの手鏡を同型の箱に入れて掛けてある鏡台がとても気になっていました。
昔ながらの形を自分なりにアレンジして作った「いにしえの鏡台」です。
使う生地にも悩みに悩んで、選んだ生地は洋の生地・モリスの刺繍生地です。
洋の生地ではあるのですが、抑えたトーンの色合いに「和」を感じました。
エンボスを取り入れたかったので薄手の麻生地を合わせることにしたのですが、なかなか日本の繊細な色彩の生地が見つかりませんでした。
本当は柿渋色のような色合いの生地を使いたかったのですがやや近いこちらの色に致しました。
本体は変形の八角形。深さの違う2段の引き出しを付けました。
脚は普段使っている猫脚や底鋲ではなく、カルトンで和に合うラインの脚を表現しました。
重みのある箱入りの手鏡を掛けるので、安定性を考えてカルトンを複数張り合わせて厚みを出しましたが、タッセルと手鏡を掛ける方向の違う突起を取り付けるのが結構大変な作業でした。
少し洋風の構造も取り入れて引き出し可能なボードを横に付けました。
ボードにも刺繍生地を。
上の引き出しには扇型のトレイが入っています。底鋲がついていて、出して使うこともできます。
下の引き出しには可動式の着物地を張ったトレイが収納されています。
同じ着物地で櫛ケース、京紅を置くお布団、懐紙入れを作りました♪
アンティークの着物地です。
合わせたのは鶯色の麻生地。
鏡部分をご紹介します。
総刺繍の生地で凹凸があるので折って処理するのが少し大変でした。
でも、この生地は本当に味わいのある色と柄ゆきです。
大変でしたが手鏡の箱の上蓋は全てこの生地にして良かったと思います。
手鏡の箱、下側は麻生地で仕上げています。
手鏡本体は昔の円形のかたちを踏襲して、取手だけ少し丸みを持たせました。
鏡側はこのようになっています。
手鏡を掛ける部分が斜めになっているのは日本の鏡台なので床に置いて使うからです。座って鏡をのぞくと丁度自分の顔が映るのです。
鏡を掛ける部分の中央と引き出しの両脇の装飾は日本の代表的な有職文様の一つ「立湧」です。
現代でも着物の柄によく用いられています。
刺繍生地が窓から覗くようにデザインしました。
本体の上には今風にアクリルを入れた平らなトレイを。
今回は納得がいかなくて何度もやり直したためにかなり時間がかかってしまいましたが、素敵な生地とも巡り合って何とか自分なりに「JAPAN」を表現致しました。
普段は取り組むことのないテーマなので、とてもいい経験になったと思っています。
さらにご一緒に参加されたビジャー先生、アトリエカルトナージュの講師の方々の素晴らしい作品に興奮しつつ、作品展の度にいつも思うこと「カルトナージュって本当に素晴らしい!」と改めて感じることが出来た作品展でした。
普段触れることのない分野の方々の作品もレベルが高いものばかりで素晴らしかったです。
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